
マクニカオンラインセミナー 2025 開催
電源モジュールの放熱設計について講演
By Phil Davies, VP Global Sales & Marketing and Tom Curatolo, Senior Principal Apps Engineering
システム内のさまざまな負荷への電力供給は、一般にPDN と呼ばれる、電力供給ネットワークを介して行われます。PDN は、ケーブル、バスバー、コネクタ、回路基板の銅箔電源プレーン、コンバータ、およびレギュレータで構成されています。PDN の性能は、電力損失、サイズ、重量、およびコストの観点で評価されます。PDN の性能は、電力供給ネットワーク全体のアーキテクチャ、すなわち、配電はAC かDC か、どのような電圧で配電するか、どの段階で電圧変換およびレギュレーション(電圧調整)を行うか、またその回数などによって決まります。このホワイトペーパーでは、電圧変換比固定コンバータ(バスコンバータともいう)という特定のDC-DC コンバータについて解説し、特に大電力の電源システムを設計するうえで、このコンバータがとても重要な構成要素となることを示します。
電力供給ネットワークを構築・最適化して、高性能で信頼性の高いシステムを実現するためには、膨大な時間が必要です。大電力のシステムの場合、高い電圧で給電すると、電流が低減できる(P = I • V)ため、PDN のサイズ、重量、コスト(ケーブル、バスバー、コネクタ、マザーボードの銅箔電源プレーン)も削減できます(PLOSS = I2R に従い損失が低減する)。PDN のなかで、低電圧・大電流に変換する前の、高電圧配電部分の距離が最大になるように配電システムを設計することにも大きな利点があります。ただし、高電圧かつ大電力のPDN を負荷の近くまで引き回すためには、高効率で電力密度の高いDC-DC コンバータが必要となります。モビリティアプリケーション(自動車)など、安全性が重視される用途では、高電圧からSELV(安全特別低電圧)レベルの配電電圧まで、高効率かつ高電力密度で変換することが、システム全体の性能を決定づけます。
DC-DC コンバータは、様々なアーキテクチャとトポロジを用いて設計されますが、基本的に、電圧安定化タイプまたは非安定化タイプ、絶縁型または非絶縁型のいずれかに分類されます。Vicor の非安定化タイプのDC-DC コンバータは電圧変換比固定コンバータと呼ばれ、大きい入・出力電圧比で動作するときに、他のタイプのコンバータより効率面で優れています。高効率であることは、すなわち低電力損失であるため、電力密度をより高めることができ、熱管理が容易になります。ただし、電圧が安定化されないため、入力電源の変動範囲が広いときには、変換比固定コンバータの下流に配置されるレギュレータに対して、より高い定電圧化の性能が求められます。近年、DC-DCレギュレータが改良されて広い入力電圧範囲にわたり高効率で動作するものが現れたことにより、変換比固定コンバータが使用できるようになりました。大電力の高電圧DC 給電と中間バス電圧が普及しつつあるなか、変換比固定コンバータまたはバスコンバータの使用によって、性能とシステムコストの大幅な改善が実現できます。
電圧変換比固定コンバータは、入力電圧を固定された比率で出力電圧に変換するDC-DC コンバータです。このコンバータは定電圧制御を行わず、入・出力電圧の関係は「巻数比」によって決まります。この巻き数比はK ファクターと呼ばれ、降圧比(出力電圧/ 入力電圧)に比例する分数で表されます。K ファクターは、K = 1 から、POL コンバータとして使うことができるK = 1/72 までの設定があります。
入力電圧は、低電圧(LV)、高電圧(HV)、および超高電圧(UHV)に対応しており、K ファクターは、目的のPDN の電圧とPoL の仕様に基づいて選択します。
電圧変換比固定コンバータは絶縁型と非絶縁型があります。Vicor のコンバータは、双方向の電力伝達と電圧変換が可能です。たとえば、双方向機能を備えたK =1/12 変換比固定コンバータは、K が12/1 のブーストコンバータとしても動作します。
図 1: 双方向の電圧変換比固定コンバータにおける、昇圧および降圧のK ファクター。
電圧変換比固定コンバータを用いると電源設計の自由度が向上します。並列接続することで簡単に大電力へ対応でき、出力を直列接続することで、実効のK ファクターがN・K(N は直列数)になるため高電圧出力へ対応できます。
図 2: BCM コンバータの並列接続。
図 3: 高電力を出力するためにBCM の出力を直列接続。
出力電力がコンバータのデューティサイクルに比例する「ハードスイッチング」のコンバータでは、デューティサイクルを変えることで、二次側から供給する電力を増減します。このカテゴリの回路方式は、パルス幅変調(PWM)コンバータと呼ばれており、スイッチングデバイスによって消費される電力が大きいため、現実的なスイッチング周波数は数百kHz に制限されるという欠点があります。それにもかかわらず、入力/ 出力電圧比が大きいアプリケーションでは、PWM コンバータはリニアレギュレータより優れているため、広く使われるようになりました。
SAC 方式は、トランスを基本とした直列共振トポロジです。レギュレーション機能をもつ擬似共振ZCS/ZVS コンバータとは異なり、SAC 方式のコンバータは、一次側タンク回路の共振周波数に等しい固定周波数で動作します。
一次側のスイッチングFET の動作は一次側の共振周波数に固定され、電流のゼロクロス点でスイッチングするため、スイッチの電力損失がなくなり(効率が向上)、高次の高調波ノイズが大幅に低減します(出力電圧に必要なフィルタリングが軽減される)。一次共振タンクの電流は、前世代のコンバータで見られた方形波や部分的な正弦波ではなく、純粋な正弦波です。これにより、高調波成分が低減されるため、出力ノイズスペクトルは大幅にクリーンになります。
SAC 方式のコンバータは、トランス1 次側にエネルギー蓄積要素が必要ないため、リーケージインダクタンスが最小になる設計にしていますそのため、SAC は非常に高い周波数で動作でき、トランスの大幅な小型化が実現し、電力密度と効率の両方が向上します。Vicor のBCM は、数MHz の周波数で動作します。この周波数は負荷に関係なく固定されています。二次側の負荷の増加に応じて、SAC は、一次側の共振タンクの正弦波電流の振幅を増加させます。これにより、二次側に結合されるエネルギー量が増加し、増加した負荷に対処します。負荷電流が低下し、無負荷の状態では正弦波の振幅がゼロに近づきます。
Vicor のバスコンバータは出力インピーダンスが極めて低くなっています。これは、理想的には共振周波数でゼロとなるトランス一次側の共振タンク回路の出力インピーダンスを反映しています。低い周波数域から共振周波数の約3 分の2 までの帯域で、出力インピーダンスは低く一定です。これは、従来のIBC の出力インピーダンスの約半分です。
SAC 方式のコンバータはトランスの一次側電流が正弦波状になるため、ノイズが小さいという特徴があります。出力ノイズのスペクトルは非常に狭く、主要な周波数成分は、スイッチング周波数と、出力段の全波整流によって生ずるスイッチングの2 倍の周波数のみです。出力フィルタは、小型の高周波セラミックコンデンサで簡単に構成できます。
Vicor の電圧変換比固定コンバータモジュールは、電圧範囲、K ファクター、絶縁型または非絶縁型、および双方向動作に関して幅広い選択肢があります。電力容量、中間バス電圧、およびPOL コンバータとしての用途に対応する次の4 つの主要なファミリがあります。
SAC 方式のコンバータ(SAC ™)トポロジを採用することで、すべてのVicor コンバータモジュールは、競合するコンバータに対して、変換効率が高く、高電力密度、低背パッケージ、高速過渡応答性能、広い帯域幅など、ほぼすべての性能で優れています。
多くの産業およびアプリケーションにおいて電力需要が急増しているために、電力供給ネットワークは大きく変化しています。新しい機能が追加され、性能が向上するのに伴い、PDN 自体の物理的なサイズ、重量、およびコストを削減するために、より高い電圧が給電に用いられるようになりました。
PDN のアーキテクチャが急速に変化している産業は、自動車およびデータセンターです。自動車業界では新たなCO2 排出基準を満たすために、車両の電動化と電気自動車への移行が進み、車両内に800V や400V、48V への変換やレギュレータが実装されるようになっています。
データセンターでは、AI(人工知能)と高性能コンピューティングの進化に対応するために、380V および48V 対応のPDN 開発が進んでいます。プロセッサの定常状態およびピーク時の消費電流は、ほぼ指数関数的に増大しています。この飛躍的な電力増大により、負荷点でPDN のジレンマが発生しており、この問題を解決するためにはアーキテクチャ、トポロジ、およびパッケージングを刷新する必要があります。
図 4: AI、クラウドコンピューティング、電気自動車などの、新たなアプリケーションで
大電力化が急速に進んでいます。
有線ドローンやエクサスケールのコンピューターでは、大電力用電源ケーブルのサイズ、重量、およびコストを削減するために、800V または380V の高電圧を使用しています。有線ドローンの場合、ドローンに接続されている電源ケーブルが1000m を超える場合があり、高い高度までドローンがこれを持ち上げる必要があります。
エクサスケールコンピューターラックの消費電力は100kW に迫ろうとしており、従来の12V の配電で対応できる余地はありません。各サーバーブレードの近傍に配置できる高電力密度のVicor K=1/8 BCM を活用することで、電力供給アーキテクチャを刷新し、ラック内の380V DC 配電を可能にすることで、PDN のサイズ、重量、コストを大幅に削減できます。この380V DC は、フロントエンドの三相AC-DC コンバータから出力されます。
これらのデバイスの双方向電圧変換特性を使用して、5G 無線システムを搭載した高出力の電波塔への給電など、新たなアプリケーションも開拓されています。このようなアプリケーションでは、地上から供給される48V(SELV)を384V にアップコンバートするためにK 1/8 変換比固定BCM ™を逆方向で使用します。逆方向で用いることで、8/1 の昇圧コンバータとして動作します。これにより、電波塔の最上部の5G 無線システムに給電する電源ケーブルのサイズとコストを大幅に削減できます。
電気自動車などのモビリティアプリケーションでは、安全上の問題から高電圧配電を使うことは困難です。高電力密度で軽量のBCM を用いて、800V から48V へ、または、400V から48V へ電圧変換すると、48V はSELV ですので、車両の配電に用いることができます。これにより、従来の12 ボルトPDN システムから、ケーブルのサイズを大幅に低減できます。 フロントエンド三相AC-DC コンバータの場合、整流とPFC ステージの後段に配置されるDC-DC 変換と絶縁の機能としてBCM を用いることができ、高電力密度・高効率が実現できます。
Vicor の新しい800V および380V 入力の電圧変換比固定のバスコンバータ(BCM)は、最大2735W/in3 の電力密度と最大98% の効率を発揮できるため、PDN の課題を解決しながら、非常に高いシステム性能が実現できます。
高電圧のPDN を利用するより48V バスで構成するほうが良いアプリケーションがあります。SELV 環境の制限があるハイブリッド車およびクラウドコンピューティングサーバーアプリケーションです。これらのアプリケーションの多くは従来の12V の負荷を使い続ける必要があります。それでもなお、48V PDN の利点を最大限に活用するためには、高性能で費用対効果が高い48V から12V へのコンバータが必要であり、高電力密度、高効率、柔軟な使い方ができる、Vicor NBM などの非絶縁型電圧変換比固定DC-DC コンバータが適しています。
Vicor NBM2317 は23mm x 17mm の表面実装ChiP ™パッケージの、1kW 出力の非絶縁型変圧変換比固定DC-DC コンバータであり、低ノイズで扱いやすいモジュールです。このNBM はスケーラブルに使うことができ、単体が評価されていれば、並列接続することにより、迅速に高出力のソリューションが実現できます。
電圧変換比固定コンバータは、データセンターのCPU、GPU、AI ASIC などの低電圧、大電流のPOL アプリケーションのためのカレントマルチプライヤとしても使用できます。入力電圧が巻数比すなわちK ファクターによって1/K にダウンコンバートされ出力されるとき、出力電流についてはK 倍の電流が供給できるように働きます。
VIN • IIN = (1/K • VOUT) (K • IOUT)
Vicor Factorized Power Architecture(FPA ™)を構成して給電する場合、PRM などの定電圧電源の後段にこのコンバータを配置することで、非常に高効率で高電力密度の48V から1V 未満へ変換するPoL ソリューションが実現します。
図 5: Factorized Power Architecture (FPA)は、プリント板上で大電流が必要な時に適しています。最近のPOL は1V 未満の低い出力電圧で大電流が必要であるため、従来のIBA(中間バスアーキテクチャ)では性能の限界にきています。CPU、GPU、およびAI プロセッサアプリケーションでは必要な電力と負荷変動が増大しているため、レギュレータを負荷デバイスの端子へ近付けて配置する必要がでてきました。
高電力密度のカレントマルチプライヤモジュール(VTM またはMCM)は、プロセッサに近接した横または真裏という、プロセッサのごく近傍に配置できます。真裏に配置されたモジュールからは、表面にあるプロセッサの電源ピンへ垂直に給電します。1000A の電流を1μ Ωの抵抗のPDN に流すと、1W の電力損失が発生します。従来のマルチフェーズ同期整流バック型VR を備えた一般的なPDN は、200μ Ω(200W の電力損失に相当)の抵抗があるため、システムが成立しません。Vicor のカレントマルチプライヤを使用した水平または垂直の給電を用いれば、PDN 抵抗をそれぞれ50μ Ωおよび5μ Ωに下げることができます。
Vicor の独創的な電圧変換比固定コンバータ用いて電力供給アーキテクチャを刷新することで、高度なシステムで必要とされる大電力で高性能の電源システムを実現することができます。電圧変換比固定のコンバータは、高電力密度、高効率であり、容易に並列接続ができ、降圧または昇圧コンバータとして使用可能です。高電力密度のカレントマルチプライヤとしてPoL コンバータの用途もあり、もっとも使いやすい高性能なDC-DC コンバータの一つです。Vicor の電圧変換比固定コンバータを取り入れて、将来を見据えた電力供給アーキテクチャを構築してください。
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