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ホワイトペーパー

大容量コンデンサを削除することにより小型/ 軽量なシステムを構築

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Bulk capacitance image

電子部品のサイズと重量は重要な要求仕様です。このことは航空宇宙などのアプリケーションにおいてとりわけ明白であり、たとえば、ドローンのサイズと重量が増加すれば、飛行距離と飛行時間が短くなります。電子部品の小型化と軽量化は、ほとんどのシステムにとってメリットになります。電源システムの設計者は、コンポーネントの選定プロセスにおいてサイズと重量の削減に集中しがちですが、この段階で得られる効果は限定的です。

適切な電源システムのアーキテクチャを選択することにより、特定の設計で最適なコンポーネントを選択することよりも、はるかに大きな効果が得られる場合があります。必要なコンポーネントと配線ケーブルは電源システムの設計により決定されます。たとえば、配電電圧が高くなれば、必要な導体の断面積を小さくでき、アプリケーションによってはこのことが重要です。

どのような電源アーキテクチャを選ぶかは、使用する全体のコンポーネント(能動部品と受動部品の両方)の選択に影響するため、アーキテクチャを適切に選択することで、全体のサイズと重量を大幅に減らせる可能性があります。コンバータ部分の電力密度と重量は重要ですが、多くの場合、電源システム全体のサイズと重量が増える大きな要因は、ヒートシンクや大容量コンデンサなどのコンポーネントです。

The Factorized Power Architecture

Factorized Power Architecture ™(FPA)は、小型で軽量が要求される電源システムにとって特に興味深いアプローチです。FPA では、負荷点(Point of Load)の大容量コンデンサを不要にし、配電ラインの前段のセラミックコンデンサに置き換えることで、サイズと重量の両方を大幅に低減できます。

たとえば、48V バスから1.5V まで降圧する場合、従来の方法では、DC-DC コンバータで中間バス(通常は12V)まで降圧し、2 つ目のDC-DC コンバータで1.5V を負荷に供給します(図1)。この方法では、負荷電流が急激に変動する可能性のある所に、大型の外付けバイパスコンデンサが必要になります。負荷の過渡変動に対して、DC-DC コンバータがすばやく応答できないため、必要なエネルギーをこのコンデンサから供給する必要があるためです。

Traditional two-stage power system image

図 1: 従来型の2 ステージの電源システム。

このような大容量コンデンサは、大きなスペースを占め、システム全体の重量も増大します。電源システムのアーキテクチャを決めた後にコンデンサのサイズと重量を最適化したとしても、小型・軽量化の効果は限定的です。サイズと重量を大幅に低減するには、コンデンサを大幅に減らす必要があります。

Factorized Power Architecture ™は、レギュレーション機能を、変圧と絶縁機能から分離します。Pre-Regulator Module(PRM™)は定電圧化されたファクトライズドバスを出力し、Voltage Transformation Module(VTM ™)は降圧・絶縁して出力します。

FPA では、レギュレーション機能を絶縁と変圧機能から分離することで、電源コンポーネントを高度に最適化できています。VTM は効率を悪化させずに降圧比を大きくとることができるため、48V から負荷の電圧へ直接変換ができます。また、中間バスがないため、システムの設計が簡単になり、効率も改善します。

PRM とVTM は非常に小型な電源コンポーネントであるため、FPA に切り替えることで、コンバータのサイズと重量を大幅に改善できますが、最大の効果は、大型の大容量コンデンサが不要になることです。

負荷点の大容量コンデンサを削除

VTM は、高いスイッチング周波数、双方向の電力変換の特徴をもち、出力インダクタンスが低いため極めて広い帯域幅を実現しています。負荷変動に対する応答は、競合他社の最速のブリック型DC-DC コンバータより20 倍高速です。これは、コンバータの帯域幅にわたる周波数で、VTM がトランスのように動作することを意味します。周波数帯域では、入力のコンデンサ容量が巻数比の2 乗をかけた出力容量として出力端子にみえるため、大きなコンデンサをPoL に配置する必要はありません。大容量コンデンサをVTM の入力の上流に移動でき、このとき低ESR/ESL のセラミックコンデンサが使用できます(図2)。

Reduction of capacitance with Factorized Power Architecture image

図 2: Factorized Power Architecture での 静電容量の削減。

コンデンサに蓄えられるエネルギーは「½CV2」として計算されます。これは、一定のエネルギーを蓄えるのに必要なコンデンサの容量は電圧の2 乗に比例して減少することを意味します。このため、上記の例では、コンデンサは負荷点の1.5V 出力側からVTM の入力側の48V バスに移動されるとすると、必要な静電容量は次のように計算できます。

Capacitance at input to VTM = 1000μF • (1.5/48)2

= 1000μF • 0.00098

= 1μF

その他のメリット

FPA システムで使用する電源コンポーネントは、高効率、低ノイズであり、高いスイッチング周波数で動作します。これにより、EMI フィルタとヒートシンクのサイズと重量を減らすことができ、一般に30% 削減できます。

Vicor の製品にBCM®(Bus Converter Module)という電源コンポーネントもあり、これは、高電圧DC 配電システムのフロントエンドとして機能します。配電電圧を高電圧DC にすることで、効率が上がり、配電に必要な導体の断面積が小さくなります。BCM は、公称380V の高電圧DC 配電電圧を48V へ降圧できるので、PRM ™の入力へ接続することで、簡単に高電圧DC 対応の電源システムを実現することができます。

結論

FPA を使うと、バイパスコンデンサを負荷点から48V ファクトライズドバスに移動することで、必要な静電容量は1/1000 に削減できます。負荷電流が過渡変動するアプリケーションに必要だった大容量のコンデンサをなくすことができ、Vicor の小型電源コンポーネントを用いて、1 ステージで効率よく降圧できるので、電源システムを従来の構成に対して1/8 ~ 1/10 に小型・軽量化できます。